サガリとは、牛の横隔膜にあたる赤身の部位です。焼肉店ではハラミと並べて別メニューになっていることが多いのですが、食品成分表では両者は区別されておらず、「横隔膜」という一つの項目に「別名:はらみ、さがり」と書かれています。
この記事では、サガリがどこの部位なのか、ハラミと何が違うのか、成分表の数値がどう変わるのかを扱います。名前の似ている「牛タンサガリ」がまったく別の部位である点にも触れます。栄養の数値は文部科学省の食品成分データベースから引いています。
サガリとは?牛の横隔膜にあたる部位
サガリは、牛の横隔膜を指す焼肉の部位名です。横隔膜は肺の下にあって呼吸のたびに動いている筋肉で、内臓を支える壁の役割をしています。分類上は内臓(副生物)に入りますが、見た目も味も赤身肉に近く、ホルモンが苦手な人でも食べやすい部位として知られています。
サガリはどこの部位?
横隔膜は、肋骨の内側から背骨に向かって広がるドーム状の膜です。このうち背中側、腰椎に近い厚みのある部分がサガリと呼ばれます。常に動いている筋肉なので血液が多く通っており、それが赤い色と濃い味につながっています。
一頭の牛から取れる横隔膜はごく限られるため、サガリもハラミも希少部位として扱われます。
「サガリ」という名前の由来
横隔膜が背骨からぶら下がるように付いていることから、この呼び名が付いたとされます。ハラミが「腹の身」を語源とするのに対し、サガリは付き方に由来する名前です。どちらも同じ膜の別の場所を指しているため、名前の付け方の違いがそのまま呼び分けになっています。
サガリとハラミの違い
この二つは「別の部位」として売られていますが、元をたどれば同じ横隔膜です。違いは膜のどこを切り出したかにあります。
食品成分表は同じ「横隔膜」として扱っている
文部科学省の食品成分データベースで横隔膜を引くと、収載されているのは「うし[副生物]横隔膜」の生・ゆで・焼きの3件だけで、サガリとハラミに分かれてはいません。3件とも備考欄には「別名:はらみ、さがり」と併記されています。
つまり公的な栄養データの上では、サガリとハラミは同じものとして扱われています。「サガリのカロリー」を調べて出てくる数値がハラミと同じなのは、元が同じ項目だからです。
焼肉店で分けているのは切り出す位置の違い
食肉の流通では、横隔膜を位置で切り分けます。肋骨側の薄く広がった部分をハラミ、背中側の厚みのある部分をサガリと呼ぶのが一般的です。サガリのほうが一頭あたりの量が少なく、厚みがある分だけ食感がしっかりします。
ただしこの呼び分けは地域や店によって揺れがあり、両方まとめてハラミとして出す店もあります。公的には同一、流通では区別、という二重構造になっているのが、この部位のややこしいところです。
| 比較項目 | サガリ | ハラミ |
|---|---|---|
| 元の部位 | 牛の横隔膜 | 牛の横隔膜 |
| 切り出す位置 | 背中側(腰椎に近い) | 肋骨側 |
| 厚み | 厚い | 薄く広い |
| 名前の由来 | ぶら下がる付き方 | 腹の身 |
| 成分表の扱い | 同じ「横隔膜」1項目(別名:はらみ、さがり) | |
数値で見るサガリ:焼くとカロリーは1.39倍になる
横隔膜は成分表に生・ゆで・焼きの3状態が載っている、副生物としては珍しい部位です。状態によって数値が大きく動くので、調べた数値がどの状態のものかを確かめる必要があります。以下はすべて可食部100gあたりです。
| 成分(100gあたり) | 生 | ゆで | 焼き |
|---|---|---|---|
| エネルギー | 288 kcal | 414 kcal | 401 kcal |
| 水分 | 57.0 g | 39.6 g | 39.4 g |
| たんぱく質 | 14.8 g | 21.3 g | 21.1 g |
| 脂質 | 27.3 g | 36.7 g | 37.2 g |
| コレステロール | 70 mg | 100 mg | 100 mg |
| 鉄 | 3.2 mg | 4.2 mg | 4.1 mg |
| 亜鉛 | 3.7 mg | 5.6 mg | 5.3 mg |
| ビタミンB12 | 3.8 µg | 3.9 µg | 6.3 µg |
出典:文部科学省 食品成分データベース(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)/うし[副生物]横隔膜・生、ゆで、焼き。2026年8月13日参照。
数値が動く理由は水分が抜けること
生288kcalに対し焼きは401kcalで、1.39倍になります。増えたように見えますが、肉そのものが変質したわけではありません。水分が57.0gから39.4gへ17.6g減っているため、同じ100gあたりで比べると中身が濃くなるからです。
たんぱく質も14.8gから21.1gへ1.43倍、亜鉛も3.7mgから5.3mgへ増えます。焼く前の重さで考えれば栄養が増えているわけではないので、「焼くと高カロリーになる」と読み違えないことが大切です。ダイエット中に部位を比べるなら、状態をそろえて比べてください。
赤身系の部位と比べたサガリの位置
同じ牛で、焼肉によく使う部位と生の状態で並べます。サガリは鉄と亜鉛が多いのが特徴です。
| 部位(生100g) | エネルギー | たんぱく質 | 脂質 | 鉄 | 亜鉛 |
|---|---|---|---|---|---|
| 横隔膜(サガリ・ハラミ) | 288 kcal | 14.8 g | 27.3 g | 3.2 mg | 3.7 mg |
| ばら(カルビ) | 381 kcal | 12.8 g | 39.4 g | 1.4 mg | 2.8 mg |
| 舌(タン) | 318 kcal | 13.3 g | 31.8 g | 2.0 mg | 2.8 mg |
| 心臓(ハツ) | 128 kcal | 16.5 g | 7.6 g | 3.3 mg | 2.1 mg |
鉄はカルビの1.4mgに対しサガリが3.2mgで、2.3倍あります。エネルギーもカルビより93kcal低く、たんぱく質は2.0g多い。「赤身に近い」という言われ方は、この数値の並びをそのまま指しています。
数値を読むときの注意:ばら(カルビ)の値は乳用肥育牛肉のものです。品種や部位の取り方で数値は変わるため、ここでの比較は傾向をつかむためのものとして見てください。焼いたときは脂が落ちるので、口に入る量も表の値とは変わります。
牛タンサガリはサガリとは別の部位
検索では「牛タンサガリ」「タンサガリ」という語もよく使われますが、これは横隔膜のサガリとは別のものです。指しているのは牛の舌の付け根側で、部位としては舌に含まれます。
同じ「サガリ」という言葉が、牛の横隔膜と、牛タンの一部という二つの意味で使われているということです。成分表でも横隔膜と舌は別の項目なので、カロリーや栄養を調べるときはどちらの意味かを先に確かめてください。舌のほうは生100gで318kcal、脂質31.8gと、横隔膜より30kcal高く脂質も4.5g多くなります。
牛タンの部位の分け方については、牛タンの部位・種類を解説した記事で扱っています。
サガリのおいしい焼き方
サガリは厚みがあるので、強火で表面を焼き固めてから、火を弱めて中まで温めるのが基本です。横隔膜は筋肉の繊維がはっきりしているため、焼きすぎると一気に硬くなります。
- 常温に戻してから焼く。冷たいまま焼くと外だけ焦げて中が冷たいままになります
- 片面を動かさずに焼く。何度も返すと肉汁が逃げます
- 中心がほんのり赤い状態で止める。余熱で火が入るので、焼き切らないほうがやわらかく仕上がります
- 繊維を断つ向きに切る。繊維に沿って切ると噛み切りにくくなります
他の部位の火加減についてはホルモンのおいしい焼き方を解説した記事にまとめています。
専門店が扱う横隔膜「味付き焼肉 牛ハラミ」
伊達のくらの味付き焼肉 牛ハラミは、横隔膜の脂の入り方と繊維の走り方を見て、繊維を断ち切る向きにカットした焼肉専用の商品です。厚みのバランスをそろえてあるので、家庭のフライパンでも火の通りが均一になります。味付け済みなので、解凍して焼くだけで仕上がります。
| 原料 | 牛ハラミ(横隔膜) |
|---|---|
| カット | 焼肉専用。繊維を断ち切る向き |
| 味付け | 済み。解凍後そのまま焼けます |
| 容量 | 250g/500g/750g/1000g(250gパック単位) |
| 価格 | 250g 1,280円から(税込) |
| お届け | 冷凍パック。250g小分けで必要な分だけ解凍できます |
サガリについてよくある質問
- サガリはどこの部位ですか?
- 牛の横隔膜にあたる部位です。横隔膜のうち背中側の厚みのある部分をサガリと呼びます。分類上は内臓(副生物)ですが、見た目も味も赤身肉に近い部位です。
- サガリとハラミの違いは何ですか?
- 元はどちらも牛の横隔膜で、切り出す位置が違います。背中側の厚い部分がサガリ、肋骨側の薄く広い部分がハラミです。食品成分表では区別されておらず、「うし[副生物]横隔膜」の1項目に「別名:はらみ、さがり」と併記されています。
- サガリのカロリーはどのくらいですか?
- 生100gあたり288kcalです。焼きでは401kcal、ゆででは414kcalになります。焼くと数値が上がるのは水分が57.0gから39.4gへ減り、同じ100gあたりで中身が濃くなるためです。
- サガリとカルビはどちらがヘルシーですか?
- 生100gで比べるとサガリが288kcal、カルビ(ばら)が381kcalで、サガリのほうが93kcal低い値です。鉄はサガリ3.2mgに対しカルビ1.4mgで、サガリが2.3倍あります。
- サガリは内臓(ホルモン)ですか?
- 分類上は内臓(副生物)に入ります。横隔膜は呼吸に使う筋肉なので、食感と味は赤身肉に近く、ホルモン特有のくせは強くありません。
- 牛タンサガリとサガリは同じものですか?
- 別の部位です。牛タンサガリは牛の舌の付け根側を指す呼び名で、部位としては舌に含まれます。サガリは横隔膜なので、成分表でも別の項目になります。
- サガリを硬くせずに焼くにはどうすればよいですか?
- 常温に戻してから強火で表面を焼き固め、火を弱めて中まで温めます。何度も返さず、中心がほんのり赤い状態で止めるとやわらかく仕上がります。切るときは繊維を断つ向きにしてください。
まとめ
サガリは牛の横隔膜にあたる部位で、背中側の厚みのある部分を指します。肋骨側の薄い部分がハラミですが、元をたどれば同じ膜です。食品成分表は両者を区別せず、「横隔膜」の1項目に「別名:はらみ、さがり」と併記しています。
数値の読み方には注意が要ります。生288kcalに対し焼きは401kcalで1.39倍ですが、これは水分が17.6g抜けて中身が濃くなった結果です。生の状態で比べると、鉄はカルビの2.3倍、エネルギーは93kcal低いという並びになります。
厚みがあるぶん焼きすぎると硬くなるのがサガリの弱点です。強火で表面を固めてから弱火にし、中心が赤いうちに止める。この一点を押さえるだけで、家庭でも噛み切りやすく仕上がります。
参考にした資料
文部科学省 食品成分データベース(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)/うし[副生物]横隔膜・生、ゆで、焼き、舌・生、心臓・生、うし[乳用肥育牛肉]ばら・脂身つき・生(2026年8月13日参照)
※本記事は食品の一般的な情報を提供するものであり、特定の疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。健康状態や食事内容について不安がある場合は、医師・管理栄養士にご相談ください。
