妊娠がわかってから、焼肉に誘われて返事に困った方は少なくないと思います。焼肉そのものを避ける必要はなく、肉の中心部まで75℃で1分以上加熱すれば食べられます。問題になるのは肉の種類ではなく、火の通り方と一部の部位です。
ここでは加熱の基準、避けたほうがよい部位、焼肉店での食べ方、鉄が多い部位までをまとめました。感染症と栄養の数値は食品安全委員会・厚生労働省・文部科学省の資料から引いています。
妊娠中の焼肉は加熱してあれば食べられる
妊娠中に注意が必要なのは、生や半生の状態で口に入る肉です。食品安全委員会は、食肉からのトキソプラズマ感染について「食肉を中心部までしっかり加熱することで防ぐことができます」としています。焼肉は自分の手で焼き加減を決められるので、条件さえ守れば管理しやすい食べ方です。
基準は中心部75℃で1分以上
食品安全委員会は、微生物などを不活化できる食材の中心温度として、細菌や多くのウイルスは75℃で1分以上、ノロウイルスは85〜90℃で90秒以上、アニサキスなどの寄生虫は70℃瞬時という値を示しています。焼肉で守るべきは1つ目の75℃で1分以上です。
家庭の焼肉で温度計を使うのは現実的ではないので、見た目で判断します。切った断面に赤い部分やピンク色が残っていないこと、肉汁が透明であることの2つを確認してください。厚みのある肉ほど中心に火が届くまで時間がかかるため、薄切りより厚切りのほうが注意が要ります。
生・半生で出てくるものは避ける
焼肉店のメニューには、加熱を前提としない品が混ざっています。ユッケ、レバ刺し、センマイ刺し、肉のタタキ、たたきユッケ風の和え物などが該当します。これらは妊娠中は避けてください。
牛のレバーは2012年から生食用としての販売・提供が禁止されており、そもそも生で出す店はありません。詳しくは生レバーが禁止になった理由にまとめています。
妊娠中の焼肉で注意する感染は2つ
焼肉で関係してくるのはトキソプラズマとリステリアです。どちらも加熱で防げます。
トキソプラズマは加熱不十分な肉から感染する
食品安全委員会の資料によると、トキソプラズマは寄生虫で、加熱不十分な豚や羊などの肉、ネコの糞便に含まれていることがあります。妊娠中に初めて感染すると、流産や死産を引き起こしたり、胎児が水頭症などを起こす先天性トキソプラズマ症になることがあるとされています。
豚肉が名指しされている点は焼肉で意識する価値があります。豚トロや豚バラ、豚ハラミを焼くときは、牛肉より念入りに火を通してください。
リステリアは冷蔵庫でも増える
リステリアの主な原因食品は、加熱殺菌していないナチュラルチーズ、スモークサーモン、生ハム、肉や魚のパテです。焼肉そのものよりも、前菜やサラダのトッピングで出てくる可能性があります。食品安全委員会は「リステリアは4℃以下の低温でも増殖可能で、冷蔵庫内でも増殖します」としており、冷蔵保存は対策になりません。
あわせて、牛肉には腸管出血性大腸菌O157、豚肉にはE型肝炎ウイルス、鶏肉にはカンピロバクターが含まれる場合があるとされています。いずれもしっかり加熱すれば防げます。
控えたほうがよい部位はレバー
加熱してあっても量を控えたい部位が1つだけあります。レバーです。理由は感染ではなくビタミンAの量にあります。
妊娠初期はビタミンAの上限を超えやすい
食品安全委員会は、妊娠初期(3か月まで)にビタミンAを非常に多く摂ると胎児の奇形を発症する懸念があるとしています。成人女性のビタミンAの耐容上限量は1日2,700μgRAEで、鶏レバーや豚レバーには100gあたりおよそ14,000μgRAEが含まれます。
同じ資料は「焼き鳥のレバー2/3本、およそ20gを食べるとビタミンAを2,800μgRAE摂ることになり、1日当たりの耐容上限量を超えてしまいます」と具体的に書いています。およそ20gで上限に届く量だということです。
すでに食べてしまって不安な方へ。同じ資料には続けてこう書かれています。「ただし、耐容上限量はここまでなら毎日食べてもリスクがないという値で、一度でも食べ過ぎたら危険、というわけではありません。気づかず食べてしまっても心配せず、当面はなるべく控えましょう」
生焼けの肉を食べてしまった場合も同じで、一度で必ず感染するわけではありません。不安が続くときは自己判断で対処せず、かかりつけの産婦人科に相談してください。
センマイ刺しは焼けば食べられる
センマイ(牛の第三胃)は刺しで出されることが多い部位ですが、焼いて食べる分には問題ありません。後述のとおり鉄が最も多い部位でもあります。生のまま出てきたら、網に載せて火を通してから食べてください。
鉄を摂るならハラミがカルビの2.3倍
妊娠中は鉄が不足しやすくなります。厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)では、鉄の推奨量に上乗せする付加量が妊娠初期は1日2.5mg、中期・後期は1日8.5mgとされています。中期・後期の上乗せ分は初期の3.4倍にあたります。
焼肉の定番部位について、文部科学省の食品成分データベース(八訂)から可食部100gあたりの数値を引いて並べました。いずれも生の値です。
| 部位 | 鉄 | エネルギー | 脂質 |
|---|---|---|---|
| センマイ(第三胃) | 6.8mg | 57kcal | 1.3g |
| ハツ(心臓) | 3.3mg | 128kcal | 7.6g |
| ハラミ(横隔膜) | 3.2mg | 288kcal | 27.3g |
| 牛たん(舌) | 2.0mg | 318kcal | 31.8g |
| カルビ(ばら) | 1.4mg | 381kcal | 39.4g |
| マルチョウ(小腸) | 1.2mg | 268kcal | 26.1g |
| シマチョウ(大腸) | 0.8mg | 150kcal | 13.0g |
| 鶏もも(皮つき) | 0.6mg | 190kcal | 14.2g |
焼肉で最も注文されるカルビの鉄は1.4mgで、8部位のうち下から4番目です。ハラミは3.2mgでカルビの2.3倍、センマイは6.8mgで4.9倍あります。センマイは脂質1.3gと最も軽く、鉄だけを見れば最良の選択ですが、扱っている店が限られます。実際に頼みやすいのはハラミです。
ハラミ生250gの鉄は8.0mgで、中期・後期に上乗せされる8.5mgのほぼ全量にあたります。もちろん鉄は焼肉だけで賄うものではありませんが、同じ焼肉なら選ぶ部位で差がつくということです。ハラミがどこの部位かはハラミの部位の解説で詳しく扱っています。
焼肉店で気をつける4つのこと
店で食べる場合、加熱以外にも押さえておきたい点があります。
- 生肉をつかむ箸やトングと、焼けた肉を取る箸を分ける。生肉に触れた面から菌が移るためで、多くの店が焼肉用トングを別に用意しています
- 焼き色ではなく断面で判断する。表面が焦げていても厚みのある肉は中心が生のことがあります
- タレは焼く前用と食べる用を分ける。生肉を漬けたタレを最後にかけない
- 塩分とカロリーの摂り過ぎに注意する。タレ・キムチ・スープが重なると塩分が増えやすくなります
ホルモンについてはホルモンは妊娠中に食べても大丈夫か、牛たんについては牛たんは妊娠中に食べても大丈夫かで、部位ごとの注意点を個別にまとめています。
家で焼いたほうが管理しやすい3つの理由
妊娠中の焼肉は、店より家のほうが条件を整えやすくなります。
- 焼き上がりを自分で確認できる。人数分をまとめて焼く必要がなく、1枚ずつ断面を見てから食べられます
- 煙と匂いを避けられる。つわりの時期は焼肉店の煙が負担になることがあり、換気扇の下やホットプレートなら調整できます
- 食べる量と部位を選べる。レバーを外す、ハラミを多めにするといった調整が自由にできます
伊達のくらの焼肉セットは、牛たん・ハラミ・カルビ・ホルモン・せせりを部位ごとに真空パックした冷凍便でお届けします。部位が分かれているので、食べたいものだけを解凍できます。ハラミとカルビだけをまとめて用意したい場合は、2部位のセットもあります。
妊娠中の焼肉についてよくある質問
- 妊娠中に焼肉を食べても大丈夫ですか?
- 肉の中心部まで75℃で1分以上加熱してあれば食べられます。食品安全委員会は、食肉からのトキソプラズマ感染は食肉を中心部までしっかり加熱することで防ぐことができるとしています。避けるのは、ユッケ・レバ刺し・タタキなど生や半生で出てくるものです。
- 妊娠初期でも焼肉は食べられますか?
- 加熱してあれば時期を問わず食べられます。ただし妊娠初期(3か月まで)はビタミンAの摂り過ぎに注意が必要なため、レバーは控えてください。食品安全委員会は、成人女性のビタミンAの耐容上限量を1日2,700μgRAEとしており、鶏レバーや豚レバーは100gあたりおよそ14,000μgRAEを含みます。
- 妊娠中に焼肉を食べてしまいました。大丈夫でしょうか?
- 一度で必ず問題が起きるわけではありません。食品安全委員会はビタミンAについて「耐容上限量はここまでなら毎日食べてもリスクがないという値で、一度でも食べ過ぎたら危険、というわけではありません。気づかず食べてしまっても心配せず、当面はなるべく控えましょう」としています。不安が続くときは、かかりつけの産婦人科に相談してください。
- 妊娠中の焼肉でおすすめの部位はどれですか?
- 鉄を摂りたいならハラミです。文部科学省の食品成分データベース(八訂)では、可食部100gあたりの鉄がハラミ3.2mg、カルビ1.4mgで、ハラミはカルビの2.3倍にあたります。センマイは6.8mgとさらに多いものの、扱っている店が限られます。
- 妊娠中に焼肉で避けるべき部位はありますか?
- レバーです。感染ではなくビタミンAの量が理由で、妊娠初期は特に控えてください。センマイ刺しやユッケのように生で提供されるものも避け、センマイは焼いてから食べてください。
- 妊娠中の焼肉で鉄はどのくらい摂れますか?
- ハラミ生250gで8.0mgです。厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2025年版)では、鉄の推奨量への付加量が妊娠初期1日2.5mg、中期・後期1日8.5mgとされているため、中期・後期の上乗せ分にほぼ相当します。
- 焼肉店の煙は妊娠中に影響しますか?
- 煙そのものより、店内が禁煙かどうかを確認してください。つわりの時期は匂いが負担になることもあるため、体調に不安があるときは家のホットプレートで焼くほうが調整しやすくなります。
- 妊娠中はホルモンも食べられますか?
- しっかり加熱すれば食べられます。シマチョウやマルチョウは厚みがあり火が通りにくいので、断面に赤みが残っていないことを確認してください。
まとめ
妊娠中の焼肉で守ることは2つだけです。中心部まで75℃で1分以上加熱することと、レバーを控えることです。生や半生で出てくるものを避ければ、焼肉そのものを我慢する必要はありません。
部位を選べば鉄も摂れます。ハラミはカルビの2.3倍の鉄を含み、生250gで8.0mgになります。家で焼けば焼き上がりも部位も自分で決められるので、体調に合わせて調整しやすくなります。
本記事は食品安全委員会「お母さんになるあなたと周りの人たちへ」、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」、文部科学省 食品成分データベース(八訂)を参照しています。体調や既往に不安がある場合は、かかりつけの産婦人科の指示を優先してください。
