かつては「レバ刺し」と呼ばれるメニューがあったように、牛のレバーを生で食べる習慣がありました。濃厚なうまみを堪能できるレバ刺しが好きだった方も多いのではないでしょうか。
しかし、昨今では飲食店で牛の生レバーを見かけることはありません。それは、レバーを生で食べることが禁止されたからです。
今回は、なぜ牛の生レバーが禁止になったのか、レバーの生食が禁止になった背景やレバーを安全に楽しむ方法などについてご説明します。
生レバーってどんなお肉?
生レバーが禁止になった背景をご説明する前に、まずはレバーの部位や牛のレバ刺しなどについて確認しておきましょう。
レバーの部位や特徴
レバーとは、肝臓のことです。牛レバーのほか、豚レバーや鶏レバーなども市販されています。
レバーは、たんぱく質や鉄、葉酸、ビタミンAなどが豊富に含まれており、脂肪の少ない栄養価の高い部位としても知られています。
牛レバーは、とろりとした柔らかい肉質と、ややクセのある濃厚な味わいが特徴です。
かつては人気メニューだった「牛のレバ刺し」
牛のレバーを生のまま刺身として食べる牛のレバ刺しは、かつては、居酒屋や焼肉店での人気メニューでした。
しかし、ある事件をきっかけに牛のレバ刺しはメニューから消えました。2012年7月の食品衛生法の改正によって、牛の生レバーを食べることは禁止されたのです。
そのため、現在、牛のレバ刺しを提供するお店はありません。
なぜ、生レバーは食べられないの?
なぜ、かつては食べることができた生レバーが禁止されてしまったのでしょうか。
レバーの生食が禁止になった経緯をご紹介します。
焼肉店で発生した食中毒事件
2011年4月、焼肉店で5名もの死者を出す食中毒事件が発生しました。また、同店の5つの別店舗での事例も含めると、軽症も含めた食中毒被害は181人にも上ったのです。
食中毒を起こした人のほとんどが食べていたものが、ユッケなどの生肉を使う料理でした。
調査を進めるうちに、卸売業者が生食用ではない牛肉を生食として販売し、レバーを切った包丁やまな板を使ってそのほかの牛肉もカットしていたことが発覚しました。
また、焼肉店でも余分な筋膜やスジなどを取り除くトリミングや衛生検査をせずに肉を提供していたこと、売れ残ったユッケを翌日も提供していたことが分かったのです。
この事件を受けて、と畜場で解体された牛の細菌検査も行われました。
結果、牛のレバーの内部からO157が検出され、牛は体内にO157を保菌している事実が明らかになったのです。
食中毒の原因となった病原菌
この事件での食中毒の原因は、腸管出血性大腸菌O111であると判断されました。また、一部の患者からは同じ腸管出血性大腸菌であるO157も検出されています。
腸管出血性大腸菌とは、ベロ毒素と呼ばれる出血性の下痢の原因となる毒素を作り出す大腸菌のことです。
腸管出血性大腸菌が体の中に入ると、腸管出血性大腸菌感染症を引き起こします。
腸管出血性大腸菌は毒性が強く、免疫力の弱い子どもや高齢者が感染すると、重症化しやすく死に至る可能性があります。
2012年7月に食品衛生法が改正される
焼肉店の食中毒事件は、社会に大きな影響を与えました。
牛のレバーからO157が検出されたということは、牛のレバーを生で食べた場合、食中毒が発生するおそれがあることを意味します。
生レバーによる食中毒リスクの抜本的な対策を実施するためには、レバーの生食を禁止しなければなりません。
この事件をきっかけに、食品衛生法が改正され、2012年7月から牛のレバーを生で食べること、つまり牛のレバ刺しが法律で禁止されたのです。
牛の生レバーが危険な理由とは
牛のレバーを生で食べると、食中毒を起こすおそれがあります。それは、牛が体内にO157を保菌している可能性があるからです。
O157について
O157は前述のように、腸管出血性大腸菌と呼ばれる病原体です。
大腸菌は、もともと人の腸管内にも存在している菌で、ほとんどの大腸菌は無害ですが、中には下痢などの症状を起こす病原大腸菌と呼ばれるものがあるのです。
このうち、ベロ毒素を産出する大腸菌を腸管出血性大腸菌と呼びます。腸管出血性大腸菌は、少数でも重い病気を引き起こすことが分かっています。
たとえ新鮮なレバーでも食中毒のおそれがある
と畜場で解体された牛のレバーからもO157が検出されています。また、牛レバーの表面だけでなく、内部にもO157が存在することが確認されています。
したがって、たとえ新鮮なレバーであっても、どんなに衛生的に取り扱ったとしても、生でレバーを食べた場合、食中毒を発症する可能性があるのです。
また、レバー内部のO157を除菌する技術は開発されていません。
そのため、生レバーによる食中毒を防ぐためには、生で牛レバーを食べないという方法しか対策のしようがないのです。
牛の生レバーが原因で発生した食中毒
1998年から2011年の13年の間に、牛のレバーの生食が原因で発生したと推定される食中毒は128件、患者数にして852人にも上ります。
また、このうちO157を含む腸管出血性大腸菌による食中毒は22件、患者数は79人となっています。
この結果を見ても、牛のレバーの生食は危険であることがお分かりになるでしょう。
参照元;厚生労働省
牛レバー以外は生で食べても問題ない?
牛のレバーは生で食べてはいけません。
では、牛以外のレバーは生で食べても大丈夫なのでしょうか?
豚の生レバーも禁止
豚のレバーも生食は禁止されています。豚のレバーや内臓、お肉を生で食べる場合、E型肝炎ウイルス(HEV)に感染するリスクがあります。
E型肝炎に感染すると、2~10週間程度の潜伏期間後に急な発熱や全身の倦怠感、吐き気・嘔吐などを発症します。
重症になった場合、回復まで数週間から数カ月もかかる可能性があり、特に妊娠している女性は、重症化リスクが高くなることが分かっています。
万が一、妊娠中にE型肝炎に感染すると、死亡するリスクや自然流産、早産につながるリスクがあるのです。
また、豚の生レバーには、サルモネラ属菌やカンピロバクター属菌などの食中毒のリスクもあります。
2015年6月12日には、食品衛生法によって豚のお肉やレバーを含む内蔵を生食用として販売・提供することが禁止されました。
豚のレバーも生で食べることは避け、中心部までしっかり加熱してから食べるようにしましょう。
鶏の生レバーは?
鶏の生レバーについては、牛や豚のように法規制があるわけではありません。
しかし、鶏肉からはサルモネラ属菌やカンピロバクター属菌などの食中毒菌が検出されています。
カンピロバクター属菌による食中毒発生件数は非常に多く、鶏の刺身やタタキ、湯引きなど、生肉や加熱が不十分な状態で鶏肉を食べたことを原因とする食中毒が多発しているのです。
カンピロバクター属菌に感染すると、腹痛や下痢、発熱などの症状が現れ、子どもや高齢者などは重症化するケースもあります。
また、発症率は高くはありませんが、ギラン・バレー症候群を発症し、後遺症が残るおそれもあるのです。
カンピロバクター属菌もわずかな量でも発症します。新鮮な鶏のレバーであっても、生食は避け、必ず十分に加熱した上で食べるようにしましょう。
生レバーが食べられるのは馬だけ
現在でも生レバーを食べられるのは、馬肉だけです。馬の生レバーは、レバ刺しとして食べることが認められています。
牛や豚、鶏のレバーを生で食べると危険なのに、なぜ、馬の生レバーは食べても問題ないのでしょうか。
O157は牛や鹿など、複数の胃を持つ反芻動物の消化管内に存在するといわれています。
馬には1つの胃しかなく、反芻動物ではありません。また、馬の体温は牛に比べて高いため、体内でO157が繁殖することができません。
これらの理由から、馬の肉や内臓内にO157は存在しないのです。
しかしながら、馬には寄生虫の1つであるトキソプラズマが潜んでいるケースがあります。
トキソプラズマは低温で死滅することが分かっているため、馬のレバーを生で食べる場合には、-20℃以下で8時間以上冷凍されたものを選ぶようにしましょう。
牛レバーを安全においしく食べる方法とは
牛レバーを安全におおいしく食べるためには、どうすればよいのでしょうか。牛レバーを楽しむポイントをご紹介します。
ポイントはしっかり加熱すること
牛レバーを安全に食べるためには、まず、内部までしっかりと過熱することが大切です。
腸管出血性大腸菌は、75℃以上で1分以上加熱すれば死滅することが分かっています。表面だけでなく、内部もしっかりと熱が加わるようにして調理するようにしましょう。
また、牛レバーを調理する際には、下処理を丁寧に行うと独特の臭みを消すことができます。
牛乳には臭みを吸収する成分が含まれているため、水洗いした牛レバーを牛乳に入れ、冷蔵庫で1~3時間程度置いておくと、おいしく食べられる状態になります。
炒めて食べる
レバー料理と聞けば、レバニラ炒めを思い浮かべる方も多いかもしれません。
炒め物をする際には、レバーに下味を付けておくとよいでしょう。
また、十分に加熱する必要がありますが、加熱しすぎるとレバーがパサつき、本来のおいしさを味わえない可能性があります。
レバニラのように、レバーと野菜を炒めて食べる際には、先に下味を付けたレバーを焼き、中まで火が通ったらいったん取り出しておくとよいでしょう。
野菜を炒めた後に、レバーを戻して味付けをすると、ふっくらとおいしいレバー炒めを楽しめます。
揚げて食べる
牛レバーは油で揚げてもおいしく食べられます。
ニンニクやショウガ、醤油などで下味を付けて、片栗粉をまぶして揚げればレバーの唐揚げができます。
また、塩・コショウや醤油などで下味を付けたレバーを串刺しに、小麦粉、卵、パン粉の順で付け、高温の油でカラっと揚げると牛レバーの串カツになります。
そのほか、塩・コショウなどで下味を付けて片栗粉にカレー粉を混ぜて油で揚げても、カレー風味でおいしくレバーを食べられます。
煮込んで食べる
牛レバーの煮込みもおすすめです。ショウガを入れて煮込むと、ショウガの風味がレバーの臭みを消し、さっぱりと食べられます。
また、醤油やみりん、砂糖、酒をベースにした甘辛いタレで煮込んだレバーも、濃いめの味付けが後を引く、ご飯にぴったりの一品です。
玉ねぎやキノコ類と牛レバーをビールや赤ワインなどで煮込み、ケチャップやウスターソースなどで味付けをすると、洋風の牛レバー煮込みに仕上がります。
レバーペーストにして食べる
フライパンでニンニクと玉ねぎのみじん切りを炒め、塩・コショウで下味を付けた牛レバーを入れ、ワインを入れて水分がなくなるまで炒めます。
その後、フードプロセッサーで細かく攪拌(かくはん)し、生クリームやバターを加え、滑らかになるまで混ぜるとレバーペーストの完成です。
スライスしてトーストしたパンに塗って食べると、おしゃれな一品になるでしょう。また、サンドイッチの具にしたり、クラッカーに乗せたりしてもおいしく食べられます。
臭みのない伊達のくらの黒毛和牛の牛レバー
伊達のくらでは、新鮮で臭みのない、最高級とされる黒毛和牛のレバーを取り扱っています。
と畜場からすぐに加工場に運び、スジや筋膜などをきれいにトリミングした上で超高速凍結機を使い、従来の8分の1ほどのスピードで急速冷凍した牛レバーです。
超高速冷凍によって細胞の破壊を阻止できるためドリップが少なく、うまみが流出しません。
そのため、生鮮食品のようなおいしさと食感を味わっていただけます。新鮮だからこそ実現した濃厚な牛レバーのうまみを、ぜひご自宅でご賞味ください。
食べやすいよう100gずつの小分けの真空パックになっており、冷凍庫で6カ月間保管が可能ですので、食べたいときに解凍するだけで、いつでもおいしい牛レバーを楽しめます。
<黒毛和牛神レバー>
まとめ
かつては牛レバーを生のままお刺身として食べることのできたレバ刺しは、濃厚な味わいと独特の食感が人気のメニューでした。
しかし、食中毒事件をきっかけに現在では、牛レバーを生で食べることは禁止されています。
牛は体内に腸管出血性大腸菌を保菌している可能性があり、生で牛のお肉や内臓を食べると、食中毒を発症するおそれがあるのです。
しかし、牛レバーは、鉄や葉酸、ビタミンAなど、栄養が豊富な食材でもあり、お肉とはまた異なる独特の味わいを持つ部位です。
牛レバーをおいしく、安全に楽しむため、食べるときには必ず内部までしっかり火を通し、加熱してから食べるようにしましょう。
また、生で食べない場合であっても、新鮮なレバーは臭みも少なく、うまみを存分に堪能できます。ぜひ、新鮮でうまみたっぷりの伊達のくらの牛レバーをお試しください。