牛肉・豚肉・鶏肉の栄養を分けているのは、たんぱく質ではなく脂質です。ひき肉で条件をそろえると、たんぱく質は3種ともほぼ17グラムで並びます。差が出るのは脂質で、牛21.1グラムに対して鶏は12.0グラムと1.76倍の開きがあります。
さらに、動物の種類を変えるより、同じ動物の中で部位や品種を変えるほうが数値は大きく動きます。牛のリブロース赤肉は和牛395キロカロリー、輸入牛163キロカロリーで2.42倍の差があり、これは牛と鶏を比べた差より大きくなります。この記事では、その構造を成分表の数値で追います。
たんぱく質は3種でほとんど変わらない
牛・豚・鶏を同じ条件で比べるには、部位の影響を消す必要があります。ひき肉はどの動物でも複数の部位を混ぜたものなので、比較の起点として使えます。可食部100グラムあたり、生の状態の数値です。
| ひき肉 | エネルギー | たんぱく質 | 脂質 |
|---|---|---|---|
| 牛ひき肉 | 251kcal | 17.1g | 21.1g |
| 豚ひき肉 | 209kcal | 17.7g | 17.2g |
| 鶏ひき肉 | 171kcal | 17.5g | 12.0g |
たんぱく質は17.1グラムから17.7グラムの範囲に収まり、3種でほとんど変わりません。たんぱく質を摂ることを目的に肉の種類を選ぶ意味は、この数値の範囲では薄いということになります。
一方で脂質は、牛21.1グラム、豚17.2グラム、鶏12.0グラムと開きます。牛と鶏で1.76倍です。エネルギーの差も、この脂質の差からほぼ説明できます。
同じ動物の中のほうが差が大きい
牛は品種で2.42倍動く
牛肉は成分表の中で、和牛肉・乳用肥育牛肉・輸入牛肉に分けて収載されています。同じ部位の同じ赤肉でも、次のように変わります。
| 部位(赤肉) | 和牛肉 | 乳用肥育牛肉 | 輸入牛肉 | 和牛と輸入の差 |
|---|---|---|---|---|
| リブロース | 395kcal | 230kcal | 163kcal | 2.42倍 |
| サーロイン | 294kcal | 167kcal | 127kcal | 2.31倍 |
| ランプ | 196kcal | 142kcal | 112kcal | 1.75倍 |
| かた | 183kcal | 138kcal | 114kcal | 1.61倍 |
| もも | 176kcal | 130kcal | 117kcal | 1.50倍 |
和牛と輸入牛の差は1.50倍から2.42倍です。牛と鶏を比べたときの1.47倍を、同じ牛の中の品種差が上回っています。
豚は部位で1.48倍動く
豚肉も部位で開きます。可食部100グラムあたり、豚ロースは248キロカロリー、豚ばらは366キロカロリーで1.48倍の差です。首まわりの豚トロは256キロカロリーで、豚ばらより110キロカロリー低くなります。
比較の物差しとして、牛ばら肉(乳用肥育牛肉・脂身つき・生)は381キロカロリーです。豚ばらの366キロカロリーとほぼ並びます。「牛は重くて豚は軽い」という言い方は、部位をそろえない限り成り立ちません。
数値を読むときに外しやすいところ
脂身つきか赤肉かで別の食品として扱われる
成分表は同じ部位を、脂身つき・皮下脂肪なし・赤肉に分けて収載しています。上の表はすべて赤肉の値です。脂身つきで見ると数値は大きく上がります。ある部位の数値を調べるときは、どの区分の値なのかを確認しないと、比較にならない数字どうしを並べることになります。
生と加熱後で重量が変わる
成分表の値は基本的に生の状態です。加熱すると水分と脂が抜けて重量が減るため、同じ100グラムでも中身が変わります。ハンバーグの例では、牛ひき肉の生100グラムは焼き上がり約66グラムになります。生の100グラムと焼き上がりの100グラムは別物です。
収載のない部位は数値で比べられない
すべての部位が成分表に載っているわけではありません。鶏の首の肉(せせり)は成分表に収載がなく、数値で比較できない部位です。にわとりの区分にある値を当てはめて「せせりは何キロカロリー」と書かれていることがありますが、それは別の部位の値です。
何を基準に選ぶか
ここまでの数値から、選ぶときの順序が決まります。
- たんぱく質が目的なら、動物の種類はほぼ問わない(3種とも約17グラム)
- 脂質を抑えたいなら、動物より先に部位を見る(赤肉か脂身つきか)
- 牛を選ぶなら品種の区分まで見る(和牛と輸入で最大2.42倍)
- 加熱後の重量で考える(生の数値をそのまま食べる量として扱わない)
部位ごとの数値は、牛肉の希少部位とホルモンのカロリーで詳しく扱っています。ひき肉の加熱後の重量はハンバーグの肉の量にまとめています。
なお牛たんは、可食部100グラムあたり318キロカロリー、脂質31.8グラムです。牛ばら肉381キロカロリーより低く、豚ばら366キロカロリーも下回ります。厚切り大トロ牛たんはたん元の中心にある芯だけを使っており、牛一頭から取れるのは約200グラムです。
よくある質問
- 牛肉・豚肉・鶏肉で栄養はどう違いますか?
- ひき肉で条件をそろえると、たんぱく質は牛17.1グラム、豚17.7グラム、鶏17.5グラムでほとんど変わりません。違いは脂質に出て、牛21.1グラム、豚17.2グラム、鶏12.0グラムと1.76倍の開きがあります。エネルギーの差もこの脂質の差から説明できます。
- たんぱく質を摂るならどの肉がよいですか?
- この数値の範囲では、動物の種類で大きくは変わりません。3種とも可食部100グラムあたり約17グラムです。量を確保したい場合は、種類を選ぶより食べる量と加熱後の重量を考えるほうが影響が大きくなります。
- 牛肉は豚肉より高カロリーですか?
- 部位をそろえないと比較になりません。牛ばら肉は381キロカロリー、豚ばらは366キロカロリーでほぼ並びます。一方で牛のもも赤肉は和牛でも176キロカロリーです。動物の種類より部位の影響のほうが大きく出ます。
- 和牛と輸入牛では栄養が違いますか?
- 同じ部位の同じ赤肉でも1.50倍から2.42倍の差があります。リブロース赤肉は和牛395キロカロリー、乳用肥育牛230キロカロリー、輸入牛163キロカロリーです。牛と鶏を比べた差より、同じ牛の中の品種差のほうが大きくなります。
- 成分表の数値をそのまま使ってよいですか?
- 区分の確認が要ります。同じ部位でも脂身つき・皮下脂肪なし・赤肉で別に収載されており、数値が大きく変わります。また値は生の状態なので、加熱後の重量とは対応しません。成分表に収載のない部位もあります。
参考にした資料
文部科学省 食品成分データベース(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)/うし[和牛肉・乳用肥育牛肉・輸入牛肉]各部位 赤肉・生、うし[乳用肥育牛肉]ばら 脂身つき・生、うし[副生物]舌・生、ぶた[大型種肉]ロース・ばら 脂身つき・生、うし・ぶた・にわとりの ひき肉・生(2026年8月18日参照)。
※本記事は食品の一般的な情報を提供するものであり、特定の疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。食事内容について不安がある場合は、医師・管理栄養士にご相談ください。

